香りが教えてくれた。
私はお客様に調香の体験をしていただくことで話すきっかけ、心を分かち合うきっかけを作りたかったのだと気付いた。
心から話をしたい
心から話を聞いてほしい
そのことがメインで調香の知識や技術を伝えたいという思いがあるわけではなかった。
だから調香師の師匠から調香講座をすることを勧められていたけど、なんとなくやる気が出なかった理由がわかった。
元々調香師の資格を取って、これで仕事をするぞ!という意気込みがあったわけではなかった。
調香師の師匠から資格試験を受けるように勧められたから、調香師になることができただけだった。
私が師匠から学んでいる調香は香りの知識や技術にとらわれると良い香りが出来なくなる。
だから今でも香りの知識や技術を覚えたいという意欲はあまりなく、自分のことを知りたいという、ただその思いだけで調香が続いている。
調香で自分を知ることができると思うと毎回楽しい。
「講座」という言葉、形にとらわれて、香りの知識や技術を教える先生っぽくならないといけないのだろうかというのが嫌なだけだった。
私の場合、香りの知識や技術を無理矢理頭に詰め込んでも覚えられないのに、覚えないといけないなんてまるで受験勉強のようだ。
テーマごとに必要な香料は香りを作る前に師匠が指定してくれる。
それに従って、自由に楽しく、ただ香りを作ることを楽しむだけで、本来の自分を知ることができるのに、香りの知識や技術が必要なのだろうかと思ってしまう。
調香の知識や技術を教える先生という立ち位置ではなく、ただ一緒に調香を楽しむという立ち位置で、お客様に調香を通じて本来の自分を知り、本来の自分を仕事を通じて表現できるようサポートしたいのだということに気づいた。
「講座」という言葉、イメージが私が本当にやりたいことを埋もれさせていた。
霧が晴れた。
モヤモヤが晴れてすっきりした。